他の地方の屋敷森との違い
出雲平野の築地松
岩手県胆沢町-エグネ-
胆沢町は、岩手県の南西部に位置し、胆沢扇状地の広大な水田地帯に屋敷林(エグネ)で囲まれた民家が点在する散居集落が形成されています。エグネの名前の由来は詳しく分かっていませんが、屋敷(居)の地境(久根)に植えている林であることから、イグネが訛ってエグネと呼ばれたでしょうか。江戸時代、伊達藩が行った屋敷林木を保護する政策により屋敷林木は勝手に伐採することが禁じられています。
エグネは、冬の北西からの季節風から屋敷を守る防風林として大きな役割を果たしています。樹の種類として、スギを中心に栗・桐などが植えられ、昔は家屋改築時の用材として使われたり、枯葉などは燃料や肥料として使用しました。
このエグネが創り出す独特の景観は全国でも高い評価を得ており、町では「えぐね等植栽推進事業」を展開し、この散居景観を未来の子どもたちへと保存・継承しています。
富山県砺波市-カイニョ-
砺波市は、富山県西部にある砺波平野のほぼ中央に位置する田園都市です。砺波平野は主に庄川が造った扇状地で、カイニョと呼ばれる屋敷林に囲まれた東向きの農家が、日本で最も典型的な散居景観を形成しています。
屋敷林はスギが中心で、ほかにアテ(アスナロ)・ケヤキ・カシ類・竹・柿・栗などで、冬の風雪から散居の家を守り、この地方独特のフェーン風を防ぐ働きをしています。また、落ち葉や枯れ枝は燃料として、竹は日常生活の資材として重要なものでした。
最近の砺波平野は、住宅や事業所の進出、道路の整備などにより、散居景観に変化が現れています。いま改めて環境保全の立場から、散居や屋敷林の持つ新しい価値が注目され、保全への論議が高まりつつあります。
静岡県大井川町-槙囲い-
富士山を眺望できる大井川町は、静岡県のほぼ中央を流れる大井川の左岸河口部に位置する、山ひとつない平坦な町です。この大井川は、江戸時代に街道一の交通の難所であっただけでなく、梅林や台風シーズンには頻繁に氾濫や破堤を繰り返してきた歴史を持っています。そこで、先人が水害から家屋敷を守るために考え出したのが「舟形屋敷」なのです。屋敷の周りを上流方向に向けて舟の舳先のような形に土手で囲い、先端部にはより水防の効果を増す「ボタ(土盛りした上に竹や樹木を植えたところ)」を築いています。また、三角形や長方形に屋敷どりをし、その三辺や二辺、あるいは全周を土手で囲った変形の「舟形屋敷」もあります。
この町では冬の西風が強く、その防風のため「槙囲い」を持つ家が多くあります。西側には松が何本か並び、きれいに刈り込まれた槙が屋敷を囲む景観は少なくなったとはいえ、日本三大散居村と言われた大井川町の姿を留めています。