築地松 ついじまつ

築地松とは

出雲平野に点在する築地松は、四季を通じてまるで絵のように美しい景観を作っています。春から夏にかけては、緑の稲田の絨毯の中に、秋には黄金の穂波の中に、そして冬には真っ白い雪景色の中に、季節と共に移り変わる築地松の風景は、とても風情があります。
 屋敷の西側と北側に植えられた黒松が、一定の高さに刈り整えられた姿には、単なる自然そのままではなく、人の手も加わった見事な造形美が感じられます。
 築地松の起こりは定かではありませんが、郷村社会の成り立ちのころ、この地方の豪族が河川の洪水時に浸水を防ぐため、屋敷の土地の高さを数メートル高くしたうえ、屋敷周りに土居(築地)を築き、その土居を固めるため水に強い樹木や竹を植えたのが、築地松のはじまりと言われています。もともとこの出雲平野は、日本でも有数の湿地であったため水はけが悪く、畑地の作物づくりには高畝式という独特なやり方が近年まで行われてきました。そういった土地環境も築地松誕生の一因になつたともいえるでしょう。

当初植えられていた木は松以外の木だったようですが、痩せた土地にも耐え、根張りも良く強風にも強い黒松が植えられるようになったようです。黒松が成長するにつれ、防風効果が認められ、家屋の周囲に築地松を植えることが定着していったようです。
四季と築地松 効用については次のようないろいろな説があります。

①冬の季節風を防ぐ。
②斐伊川の氾濫から土地を守る。
③枝おろししたものを燃料として蓄える。
④火災の時、隣家への延焼を防ぐ。
⑤マテバシイの実や竹の子を食料の足しにする。
⑥家屋に風格を持たせる。